医療法人社団 北つむぎ会 さっぽろ麻生乳腺甲状腺クリニック [北海道札幌市]

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院長のよもやま話

ヘアカラーリングと乳がん

更新日:2021年05月21日

ヘアカラーリングや直毛剤には5000種の化学物質が使われ、その中には発癌物質や芳香族アミンなどの内分泌かく乱物質が含まれており、一部はラットで乳腺腫瘍を引き起こす物質や4-ABPなどのようにヒト乳腺組織に到達する物質が知られています。今回米国のシスター研究の一部として、染毛剤や直毛剤が乳がん発症と関連することが報告されました(IJC 2019.2)。

35-74歳の、自分は乳がんではないが、姉妹に乳がん罹患者が1名以上いる女性46,709名が2003年から2009年の間に登録され、登録時に過去1年間の染毛剤や直毛剤の使用歴、種類や頻度が調べられました。平均追跡期間8.3年で2,794名が乳がんを発症しました。55%が登録時に永久染毛剤を使用していました。永久染毛剤を使用した黒人では乳がんリスクが45%高く、白人では7%でした。すべての登録者の中で、個人的な直毛剤使用者では乳がんリスクが18%上昇し、頻回になるにつれて高くなる傾向がありました。半永久染毛剤と直毛剤を他の人に非職業的に施す人では、乳がんリスクがそれぞれ28%、27%高くなりました。すべての直毛剤の使用と永久的染毛剤の個人的使用が高い乳がんリスクと関連していました、特に黒人で。これらの結果から、著者らはヘアケア製品中の化学物質が乳がんの発がんに何らかの役割を果たすかも知れないとしています。

この報告の弱点は対象が乳がん家族歴のある女性なので、このまま一般化できないこと、1年間のことを思い出してアンケートに答えるため、想起バイアスが生じることがあります。また、1年間の使用にしては発がん率が高く、もっと長期のヘアケア製品の使用期間を追跡する必要を指摘する人もいます。

これらの弱点があるものの、多数の前向き研究でヘアケア製品の使用と乳がんに関連がみられたことは重要で、さらに大規模な臨床試験や製品に含まれる化学物質の研究が望まれます。