医療法人社団 北つむぎ会 さっぽろ麻生乳腺甲状腺クリニック [北海道札幌市]

北海道札幌市北区北38条西8丁目2-3

院長のよもやま話

乳がんが発症する主要な3つの要因とは別に 乳がんを引き起こす“乳がん幹細胞”の研究が進んでいます

更新日:2012年04月01日

乳がんの幹細胞を抑制する、治療方法の現状について

京都大学の山中教授らが2006年に世界ではじめて、マウスの繊維芽細胞からiPS(アイピーエス)細胞(人工多能性幹細胞)を作ることに成功しました。幹細胞とは、さまざまな細胞に分化することができる多能性の細胞なので、人工的に作ることができれば今後の再生医療の中心となることは間違いありません。

ところで、正常細胞と同様にがん細胞にも幹細胞があることが分かりました。1997年に白血病で、2003年には乳がん幹細胞が発見されています。正常な乳腺上皮増殖の過程でホルモン受容体が付加されますが、がん抑制遺伝子であるBRCA1(プラカ・ワン)に変異があると、このホルモン受容体陰性の幹細胞の蓄積が起こります。この幹細胞からトリプルネガティブ乳がん(乳がんを引き起こす主要な3つの因子と関係なく発生するがん)が発生すると考えられます。3因子とは、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2(ハーツー)型です。

また、ホルモン受容体が付加された後でHER2受容体まで付加されると、進行の早いHER2型乳がんの発生素地となります。多能性、自己複数性をもったこれらの乳がん幹細胞(または前駆細胞)は、実際のがん組織中ごくわずかにしか存在しません。しかし、この幹細胞は無限増殖能をもち、化学療法や放射線療法に抵抗性を示します。乳がん幹細胞を攻撃する治療があれば、がん根治(がんがなくなること)も十分可能となるでしょう。この治療の候補としてPARP-1(パープ・ワン)阻害剤が現在、臨床試験の最終段階まできています。

また、慢性炎症で産生(細胞で物質が合成・生成されること)されるIL -8(アイエル・エイト)の受容体阻害剤リペルタキシンも、マウスの実験で乳がん幹細胞の増殖を抑制すると報告されました。このほか最近、ブロッコリーなどに含まれる植物栄養素スルフォラファンが、乳がん幹細胞の増殖を抑制することも報告されています。まだ、細胞培養での実験ですが将来に期待したいですね。