医療法人社団 北つむぎ会 さっぽろ麻生乳腺甲状腺クリニック [北海道札幌市]

北海道札幌市北区北38条西8丁目2-3

院長のよもやま話

マンモグラフィー検診にエコー併用をお勧めします

更新日:2008年06月01日

マンモグラフィーとエコー併用の検診結果

最近、米国医学会雑誌(JAMA2008年5月13日号)に、マンモグラフィーだけでは5人に1人の乳がんを見落とす可能性があるとの報告がありました。これは、乳腺の密度が濃い乳房をもつ乳がんリスクの高い女性2809人を対象としたもので、著者らは超音波検診を併用することを勧めています。

わが国では2007年2 月に厚生労働省研究班(班長/東北大学 大内憲明教授)が宮城県で11万2000人を対象とした大規模な研究を行っています。この結果、視触診とマンモグラフィー検診だけだと、40代では約3割近くの乳がんが見落とされていた可能性があったことが判明しました( 50〜60代では、その半数の約15%)。

しかし、大内教授らは宮城県内の乳がん登録者7701人を分析して、マンモグラフィー検診で見つかった人の死亡リスクを1とすると、視触診だけで発見された場合の死亡率は2・64倍であったと2006年に報告しています。したがってマンモグラフィー検診の乳がん死亡率に対する貢献は大変意味のあるものですが、エコー検診を併用することによって、さらに乳がん発見率、死亡率が減少することが期待されています。

エコーを併用した検診のプロジェクトが発足

2007年9月に大内教授を責任者として、厚生労働省は国家的プロジェクトである「乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験」(J- START)を立ち上げました。

同プロジェクトには「北海道対がん協会」も参加し、道内在住の40歳代の女性約12万人を対象に、マンモグラフィー検査にエコー検査を併用する検診と併用しない検診を実施しています。これは両群の間で、検診の精度、利益・不利益および有効性を明らかにする大規模な比較試験です。将来的には、乳がん死亡率の3割減を目標としています。

もちろん、当院としては精密検査でも乳房検診でも、エコーを併用することをお勧めしています。